神経を抜くと言われて不安な方へ
「神経を取る必要があります」——歯科医院でこう告げられて、不安になったことはありませんか?
歯の神経(歯髄)は、できる限り残したい大切な組織です。 しかし、症状やむし歯の進行具合によっては、どうしても抜かなければならない場合もあります。
この記事では、
- 神経を残せるかどうかの判断基準
- 神経を残す治療のメリット・リスク
- 抜髄(神経を取る処置)が必要になるケース をわかりやすくご紹介します。
歯の神経とその役割を知る
歯髄が果たす大切な働き
歯の内部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経や血管が通っています。 これは、歯に酸素や栄養を届け、健康な状態を保つための大切な組織です。
歯の構造と神経の位置関係(図解)
📍 図:歯の構造と歯髄の働き
- エナメル質:歯の一番外側にある硬い部分
- 象牙質:その内側にあり、神経に近い層(エナメル質より軟らかい)
- 歯髄:神経や血管が集まり、歯に栄養や感覚を与える
- 歯槽骨:歯を支えるあごの骨
- 歯根膜:歯根とあごの骨(歯槽骨)をつなぐ靭帯、膜状になっている
この歯髄があることで、歯は“生きている”状態を保ち、外部からの刺激を感知することができます。
神経を残す治療とは?
歯髄保存処置ができるケース
むし歯が深くても、神経まで完全に感染していなければ、**「歯髄保存処置」**という方法で神経を残すことができます。
- 冷たいものがしみるなどの軽度な症状
- 自然に痛みがおさまることがある
このような状態であれば、慎重に処置することで神経を温存し、歯の寿命を延ばすことができます。
神経を残すメリット
- 感覚の維持:温度や痛みの感覚が残るため、自然な使い心地を維持できます。
- 歯の強度保持:歯に栄養が届きやすく、長期的に歯が割れにくくなります。
- 違和感の少ない仕上がり:神経があることで、治療後の感覚も自然です。
神経を抜く必要があるのはどんな時?
抜髄が必要な主な症状・所見
以下のような状態では、神経がすでに炎症や感染を起こしており、**抜髄(ばつずい)**という神経を抜く処置が必要になります。
- 何もしていなくてもズキズキと痛む(自発痛)
- 夜眠れないほどの強い痛み
- 歯ぐきにウミの出口(瘻孔)がある
- レントゲンやCTで根の周囲に黒い影(根尖病変)が見られる
これらはすでに歯髄が細菌感染しているサインであり、残しておくと悪化する恐れがあります。
神経を抜いた歯の変化と処置(根管治療)
神経を抜くと、歯は栄養供給を失い、細菌に対して抵抗力を失います。 そのままでは細菌が繁殖しやすいため、根管治療(歯の内部の清掃・封鎖)を行って感染を防ぎます。
神経を抜かざるを得ない原因とは
むし歯だけじゃない!5つの抜髄原因
抜髄が必要になる主な原因には、次のようなものがあります:
- むし歯(カリエス):進行したむし歯が神経に達すると炎症や感染が起こり、抜髄が必要になります。特に治療が遅れると痛みや腫れを引き起こすため、抜髄を避けることが難しくなります。
- 外傷(打撲・事故など):転倒や事故などで歯を強く打った際、神経が損傷して抜髄が必要になることがあります。
- 歯のひび割れ(クラック):歯にひびが入り、その亀裂が神経に達すると、強い痛みを生じます。ひび割れからの細菌感染を防ぐために神経を取る処置が必要になります。
- 重度の歯周病:進行した歯周病によって歯の根に感染が広がり、神経にも悪影響を及ぼすことがあります。
- 過度な歯科治療や修復物による刺激:詰め物や被せ物のやり直しを繰り返すと、神経に負担がかかり、炎症が起きて抜髄が必要になることがあります。
最も多い原因は「進行したむし歯」です。むし歯を早期に発見し、適切な処置を受けることで神経を守れる可能性が高まりますが、症状が進行すると抜髄が避けられない場合もあります。
進行による歯の状態の変化(図解)
下記の図は、むし歯の進行にともなう歯の内部の変化を示しています:
- 健康な歯:神経が生きており、刺激に反応できる状態
- 神経に達したむし歯:痛みや炎症が起きている段階
- 神経を除去した歯(抜髄後):根管治療によって清掃された状態
感染した神経を残すリスク
症状が悪化する前にすべき判断とは?
「できれば神経は残したい」と思う方は多いですが、感染した神経を無理に残すと、以下のようなリスクがあります:
- 痛みや腫れが長引く
- 歯の周囲の骨が溶けてしまう(骨吸収)
- 骨吸収がすすみ、抜歯に至るケースも
そのため、感染が疑われる場合には、早期に神経を除去し、適切な治療を行うことが大切です。
まとめ:歯の神経を残すか、抜くかの判断基準
患者さんごとの最適な治療方針とは?
神経を残すか、抜くかの判断は、歯の状態や症状、画像所見をもとに慎重に行います。
当院では、CTやマイクロスコープなどの精密検査をもとに、できるだけ神経を残す治療を心がけつつ、無理のない範囲で最適な処置をご提案しています。
不安な方は精密検査での相談を
「神経を抜く」と言われて不安な方も、まずは一度ご相談ください。
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日付: 2025年5月16日 カテゴリ:MI修復, コラム, むし歯治療, 根管治療, 歯髄保存処置, 院長ブログ and tagged CT診断, マイクロスコープ, 初診 根管治療 精密検査 CT診断 坂上デンタルオフィス 二子玉川, 抜髄, 根尖病変, 根管治療, 歯の神経, 歯髄保存処置, 神経を抜く, 神経を残す, 精密根管治療, 黒い影