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タグアーカイブ: 湾曲根管

【歯の根の形って1本1本ちがう?】複雑な根管に挑む専門治療の現場

「歯の根って、みんな同じ形じゃないの?」

そう思われる方は多いかもしれません。
実は、歯の根の中を通る“神経の管(根管)”の形は、1本1本異なるのが当たり前なのです。
まっすぐな根もあれば、曲がったり、複雑に枝分かれしていたりする根もあります。
根の形が違えば、治療の進め方や難易度も変わります。

当院ではCTやマイクロスコープを活用し、1本1本異なる根の形を正確に把握したうえで、丁寧な治療を行っています。

今回は、そんな“見えない部分”である歯の根の形についてご紹介します。


歯の中の「根管」って?

歯の断面図イラスト。エナメル質・象牙質・歯髄・歯肉・歯槽骨・歯根膜の位置と名称が示され、歯髄は痛みなどの刺激を脳へ伝える役割があると説明されている

歯の中には「根管」と呼ばれる細い管があり、その中に歯髄(しずい)という神経や血管を含む組織が入っています。

歯髄があることで、歯は痛みや温度変化を感じ、酸素や栄養が届けられて健康な状態が保たれます。
歯髄は歯の中心から根の先端まで伸びていて、**その通り道が「根管」**です。

むし歯が進行して歯髄に炎症が起きると、**根管内を清掃して隙間なく封鎖する「根管治療」**が必要になります。

根管はとても細かく入り組んだ形をしていることが多いため、治療には高い技術と慎重な判断が欠かせません。

👉関連記事:【歯の神経を残せるか不安な方へ】残す治療と抜く判断のポイント


歯の根は1本1本ちがうって本当?

同じ種類の歯でも、歯の根の本数や形は人によって異なります。
たとえば奥歯(大臼歯)は通常2〜3本の根がありますが、まれに4~5本あることもあります。

また、一見1本に見える根の中でも、C字状に複雑につながっているケースや、枝分かれしているケースも珍しくありません。


どんな形があるの?〜代表的な根管の形~

Vertucci分類

根管の形の基本的な分類に「Vertucci(ベルトゥッチ)分類」というものがあります。
これは、根管がどのように枝分かれし、どのようにつながっているかを8つのパターンに分けたものです。実際の歯では、この分類に収まらないようなさらに複雑な形も多く見られるため、治療前の精密な診断がとても重要です。

▼ Vertucci分類図

根管形態の分類図。Type1~Type8までの8種類の形態が図と説明付きで示されており、分岐や合流のパターンの違いがわかる


複雑な根管形態のいろいろ

歯の根の形は、Vertucci分類のような基本パターンに加えて、さらに多くの複雑な形態があります。
中には治療が難しく、根管を見逃したり、感染が残り炎症が起きたりするリスクが高まる場合もあります。
ここでは、実際の歯科治療の現場でよく遭遇する複雑な根管形態の一例をご紹介します。

▼根管形態図

根管の複雑な形態や変異を図と説明で示した一覧表。側枝・分岐・湾曲・フィン・イスムス・癒合歯など、治療上の注意点が解説されている


根の形に合わせた根管治療で、歯をできるだけ残す

歯の根の形は、一人ひとり違い、ときにはとても複雑なこともあります。
そうした見えにくい部分までしっかり診断し、その歯に合った方法で、できるだけ歯を残せるように治療を行うことが大切です。

「抜歯しかないかも…」と感じたときも、まずはCTやマイクロスコープを活用した精密な検査を受けてみませんか。治療の可能性は、診てみないと分からないこともたくさんあります。

もし気になる歯がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


👉 初診のご予約はこちらから

当院ではCT診断やマイクロスコープを活用した精密な根管治療を、すべて自由診療にて行っています。
治療費用について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
👉 治療の費用についてはこちら


✅関連記事はこちら

👉【症状がないのに治療が必要?】CTで見つかった神経に近い黒い影と複雑な樋状根の治療例
└ 今回紹介した「樋状根」が見つかった実際の症例。無症状でも治療が必要になることも。

👉【左下の歯ぐきがしびれる】下顎管に近接した根尖の黒い影が改善した症例
└ 根の先が神経の近くにあるうえ、大きく曲がっている難しいケース

👉【初診ってそんなに時間がかかるの?】丁寧な診断と納得できる治療のために


🦷 坂上デンタルオフィス

📍東京都世田谷区玉川3-14-8 3F
📞 03-6805-6546

最後までお読みいただきありがとうございました。

根管治療専門医による精密根管治療【坂上デンタルオフィス】

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【左下の歯ぐきがしびれる】下顎管に近接した根尖の黒い影が改善した症例

こんにちは。
世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

今回は、「左下の歯ぐきがしびれる」という症状でご来院された患者様の症例をご紹介します。

前回の「【症状がないのに治療が必要?】CTで見つかった神経に近い黒い影と複雑な樋状根の治療例」では、下顎管(神経の通り道)に近接した根尖部の黒い影(骨がない部分)が見つかったケースをご紹介しましたが、今回は実際にしびれの症状が出ていたケースです。

「下顎管」と聞くと親知らずの抜歯を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実はそれ以外の歯でも、CTを用いた正確な診断と慎重な根管治療によって、症状の改善が期待できるケースがあります。

本症例では、マイクロスコープ下で慎重に根管治療を行い、しびれの改善と炎症の消退が確認されました。


初診時の状態:歯ぐきのしびれが起きたときの状態とは?

患者様は、左下7番(第二大臼歯)に噛んだときの痛みと、歯ぐきや唇・顎の皮膚のしびれを感じているとのことで、紹介元の歯科医院から当院を受診されました。

CT検査では、歯の根の先に黒い影(骨がない部分)があり、それが下顎管に非常に近接していることが確認されました。


検査と診断:CTでわかった根尖病変と下歯槽神経との距離

  • 自発痛:なし
  • 打診痛:軽度
  • 圧痛・腫れ:なし
  • レントゲン所見:根尖に黒い影
  • CT所見:黒い影が下歯槽神経(下顎の歯や歯肉、唇などを支配する感覚神経)を通す下顎管に近接
  • 根管形態:未処置、2根管で強い湾曲あり

術前のレントゲン画像:左下の奥歯に根尖の黒い影が確認される 図1:根管がくの字に湾曲している様子を赤いラインで示したレントゲン画像

術前CT画像:左下の歯の根の先に黒い影があり、下顎管に近接していることがわかる」 図2:CT画像で下顎管(黄色)と根尖の黒い影(青色)の位置関係を示した画像


治療方針とリスク説明:しびれの改善を目指した根管治療と注意点

根尖部の黒い影が下顎管に近接しているため、治療による神経への影響を最小限に抑えることが最も重要と判断しました。

また、根管治療を行っても「しびれの症状が必ずしも回復するとは限らない」という点についても、あらかじめ十分にご説明し、同意のうえで治療を開始しました。


治療経過

▶ 第1回目の治療

銀歯を外し、ラバーダム防湿下でむし歯を丁寧に除去し、根管治療の準備として隔壁を作製しました。

根管内の清掃では、根管の大きな湾曲に注意しながら以下の点に留意して処置を行いました。

  • 細い器具を使用して、無理なく根の先まで到達できるようにグライドパス(器具の通り道)を確立
  • 柔軟性のあるNiTi(ニッケルチタン)ファイルを用い、根のカーブに沿って慎重に拡大
  • 根管の形態を壊さないように、一度に大きく削らず、少しずつ段階的に処置

▶ 第2回目の治療

来院時、「しびれが少しずつ軽くなってきた」とのことでした。

根管内の清掃を引き続き丁寧に行い、その後、慎重に根管充填を行いました。
その後、ポスト・コア(支台築造)を実施しています。
根管充填時に少量のシーラー(根管充填材)が根尖部から漏出しましたが、痛みなどの症状は認められなかったため、経過観察としました。

第3回目の治療

治療開始時に訴えのあったしびれと痛みはほぼ消失しており、症状は大きく改善していました。
支台の形態を整え、仮歯を装着して治療を終了しました。

根管治療に伴う左下奥歯の治療経過:銀歯除去から仮封、ポスト・コア築造、仮歯装着までの4段階の比較写真


経過観察:治療後のしびれの変化とCT画像の変化

  • 根管充填後3カ月:痛み・しびれともに消失。レントゲン画像は大きな変化なく、経過観察。
  • 根管充填後6カ月:痛みなく食事できる。レントゲンとCTで黒い影の縮小と**下顎管からの距離の回復(骨再生の兆候)**を確認

根管治療による黒い影の変化を示したデンタルX線画像:術前・根管充填後・3カ月後・半年後の比較

CT画像による根尖病変の変化比較:術前と根管充填後半年、黒い影の縮小が確認される


まとめ:しびれが改善した神経に近接した歯の治療例

今回のケースでは、治療開始時に見られた歯ぐきや唇のしびれが、根管治療の経過とともに徐々に軽減し、最終的には痛みもなく快適に食事ができる状態まで回復しました。

しびれの原因は、歯の根の先にあった炎症(根尖病変)が、下顎の神経(下歯槽神経)に近接していたことによるものと考えられますが、的確な診査・診断と慎重な処置を重ねることで、神経症状の改善が期待できるということを、あらためて確認できた症例でした。

なお、根管治療後の回復には個人差があり、すべてのケースで同様の結果が得られるとは限りませんが、気になる症状や違和感がある場合には、できるだけ早めに専門的な診察を受けることをおすすめします。

不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。


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治療費用について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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