世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。
今回は、「しみる感じがある」という訴えから、むし歯が深く神経に非常に近接していた歯に対して歯髄保存処置(神経を残す治療)を行い、最終的に神経を取らずに済んだ成功症例をご紹介します。
当初は、神経が露出するほど深くむし歯が進行していましたが、適切な診断と断髄処置、そして経過観察を重ねることで、処置から1年後も神経は生きたまま機能しており、良好な結果が得られました。
初診時の状態:詰めた歯がしみる
患者さんは、当院で別の歯の治療を受けていた際に、「右上6番がしみる感じがある」とご相談されました。レントゲン撮影を行うと、右上6番の遠心部(奥側)にある古い詰め物(コンポジットレジン:CR)の下でむし歯が進行しており、神経(歯髄)に非常に近い位置に達していることが確認されました。
▲ 初診時のレントゲン(右上6番)
過去のCR下でむし歯が進行し、神経にかなり接近している状態です。
この段階では右上6番に明らかな症状は見られませんでしたが、むし歯が深く、治療中に神経に近づく、または露髄する可能性が高いと判断されました。
また、処置後に症状が出てくる可能性があることもあわせてご説明し、患者さんには内容をご理解いただいたうえで治療を開始しました。
処置:露髄に対して断髄処置を選択
数週間後、麻酔を行ったうえで治療を開始。旧CRを除去し、むし歯を慎重に取り除いていくと、歯髄の一部が露出(露髄)しました。この時点でラバーダム(ゴムのシート)を使用して感染を防ぎながら、断髄処置(歯髄の一部を取り除いて残りを保存する方法)を実施しました。
MTAセメント(神経を保護・封鎖する薬剤)とBCライナー(神経を刺激から守る保護材)を使用し、神経を封鎖。その後CR充填にて修復を行いました。
▲ 断髄処置後のレントゲン
露髄部を適切に処置し、MTAセメント+BCライナーで神経を保護しました。
処置後の経過観察:神経の生存と歯の状態
約3週間後
- 「温かいものでしみる」「少し腫れていた」などの訴えあり
→ 安静時の痛みはなく、歯髄反応も正常だったため、経過良好と判断
→ CR再充填と咬合調整を行い、様子を見ました
約4か月後
- 「食事の時に違和感がある」「冷風で一瞬しみる」
→ レントゲンで異常所見なし、軽度症状として経過観察継続
▲ 処置から約4か月後のレントゲン
歯根や根尖部に異常は見られず、歯髄の状態も安定していました。
約6か月後
- 「たまに噛んだときに違和感」「冷風痛が少しある」
→ 強い症状や悪化はなく、レントゲンも異常なし。引き続き慎重に経過観察。
▲ 処置後6か月のレントゲン
経過は安定しており、歯髄が機能を保っていることが示唆されます。
約1年後
- 「しみる感じはない」「噛んでも痛くない」との報告
→ 神経が生きたまま安定していることを確認し、処置成功と判断
▲ 処置から約1年後のレントゲン
根尖部にも異常所見はなく、歯髄保存が良好に維持されていることがわかります。
まとめ:早期発見・適切な処置・丁寧な経過観察で神経を守る
今回の症例では、以前に詰めたCR(コンポジットレジン)の下でむし歯が進行していたものの、露髄した神経に対して迅速に断髄処置を行い、歯髄を保存することができました。
処置直後はしみる・違和感などの軽度な症状がみられる時期もありましたが、慎重に経過を観察しながら対応を続けたことで、最終的には痛みもなく、神経を残したまま安定した状態を保てています。
歯髄保存処置の成功には、適切な診断と処置はもちろん、その後の丁寧な経過観察が不可欠です。
神経が生きている歯であっても、時間とともに状態が変化することもあるため、治療の有無にかかわらず、定期的なレントゲン検査を通じて状態を確認することがとても大切です。
当院では、精密な診査・診断に基づいた処置と、その後の経過管理を重視し、可能な限り歯の神経を残す治療を大切にしています。
むし歯や歯の違和感など、気になる症状がある場合は、お早めにご相談ください。
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日付: 2025年5月9日 カテゴリ:MI修復, むし歯治療, 歯髄保存処置, 院長ブログ and tagged MTAセメント, マイクロスコープ, ラバーダム, 世田谷区, 二子玉川, 坂上デンタルオフィス, 根管治療, 根管治療専門, 歯がしみる, 歯が沁みる, 歯髄保存処置, 深いむし歯, 神経を残す治療, 精密根管治療, 自由診療