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タグアーカイブ: 側枝

【痛くない歯は本当に大丈夫?】定期検査で見つかった、見えない問題の正体

世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

「痛くないから、この歯は大丈夫」
そう思って、特に気にせず過ごしている歯はありませんか。

今回ご紹介する症例は、
まさにそのような状態の歯に、検査をきっかけに“歯の根の問題”が見つかったケースです。

自覚症状はまったくありませんでしたが、放置すると悪化する可能性がある状態でした。

なぜ気づけなかったのか。
なぜ治療が必要だったのか。
そして、治療後はどうなったのか。

患者さまの目線で、わかりやすくお伝えしていきます。


初診時の状態

経緯・主訴

患者さまは、かかりつけ歯科医院にて別の部位の治療を予定しており、
その事前検査としてCT撮影を受けました。

その際、
ご本人には痛みや違和感などの自覚症状がないにもかかわらず、
右上5番の歯の根の先に影が見つかりました。

「自分では何も困っていない歯に、問題があると言われた」
という状況に、不安を感じられたそうです。

精密な診査と、必要に応じた治療を行うため、
かかりつけ歯科医院より当院へご紹介となりました。


所見

初診時のレントゲン画像で、右上5番の歯の根の先に黒い影が確認できる画像 診時のCT画像で、右上5番の歯の根の先と側方に黒い影が確認できる画像
▲初診時のレントゲン・CT画像

● 口腔内診査

患者さまに、痛みや腫れなどの自覚症状はありませんでした。
自発痛、打診痛、圧痛はいずれも認められず、
歯ぐきの腫脹も見られませんでした。

歯周ポケットは3mmで、
歯ぐきに大きな異常所見はありませんでした。

右上6番はすでに欠損しており、
右上7・6・5番をつないだ被せ物(ブリッジ)が入っている状態でした。

右上6番相当部にインプラント埋入を予定しており、その前に右上5番の根尖病変を治療しておく必要がありました。

 

●レントゲン・CT画像所見

レントゲン写真およびCT画像にて、 右上5番の根尖部に黒い影(骨のない部分)が認められました。
また、根の後ろ側にも黒い影が確認され、 根の先だけでなく、側方にも病変が広がっている可能性が示唆されました。

この所見から、

  • 側枝(主根管とは別の細い根管)の感染
  • 歯根破折の可能性

といった点も考慮する必要があり、 原因を慎重に見極めながら治療を進める必要があると判断しました。


側枝とは?

歯の中には、神経や血管が通っていた根管と呼ばれる細い管があります。

レントゲンでは根管は1本に見えても、中には主な根管から枝分かれした、非常に細い管が存在することがあります。

これを「側枝(そくし)」と呼びます。

側枝はとても細く、通常のレントゲンでははっきり確認できないことも多いため、 感染が残っていても気づかれにくい特徴があります。

側枝に細菌が入り込むと、レントゲンやCTを撮影したときに、歯の根の先だけでなく、側方にまで黒い影が広がって見えることがあります。

今回の症例では、根の先だけでなく側方にも影が見られたため、側枝の関与も考えながら、 慎重に根管治療を進める必要があると判断しました。


治療の経過

治療1回目

  • 初診時と同様、治療開始時点でも痛みや腫れなどの自覚症状はありませんでした。
  • 麻酔を行い、右上7・6・5番をつないだ被せ物(ブリッジ)を切断し、除去しました。
  • その後、ラバーダム(ゴム製のシート)を装着し、清潔で安全な治療環境を確保したうえで、土台の除去を行いました。
  • ラバーダムを使用することで、削りカスがのどに流れたり、治療中に唾液や細菌が入り込むことを防ぎます。
  • 根管内の清掃を行ったのち、治療中に唾液や細菌が入り込んで再感染しないよう、隔壁を作製しました。
  • 仮歯を作製し、仮着してこの日の治療を終了しました。

 

治療2回目

  • 前回の治療後も、痛みなどの症状はなく、状態は安定していました。
  • 麻酔を行い、仮歯を外してラバーダムを装着しました。
  • 根管内を十分に清掃したのち、根管充填を行いました。
  • 歯冠部を仮封し、仮歯を再度装着してこの日の処置を終了しました。
  • 根管充填後の状態を確認するため、レントゲン写真を撮影しました。
  • 根の先だけでなく、側方に広がっていた黒い影の原因と考えられていた側枝にも、根管充填材がしっかりと行き届いていることが確認できました。

右上5番の根管充填直後のレントゲン画像
▲根管充填直後のレントゲン画像
根の先、側枝部分まで、しっかりと材料が充填されています。

 

治療3回目

  • 麻酔を行い、仮歯を外してラバーダムを装着しました。
  • 根管治療を終えた右上5番に対して、ポスト(支柱)とコア(土台)を作製しました。
  • 仮歯の形態を調整し、再度仮着して治療を終了しました。
  • 今後は、根尖部および側方に見られた黒い影が、どのように改善していくかを経過観察していきます。

経過観察

根管充填後は、画像と症状の両面から経過を確認していきました。

右上5番の術前から根管充填直後、3か月後、6か月後までを比較したレントゲン画像で、根の先にあった黒い影が改善している様子が確認できる画像
▲レントゲンでの経過

右上5番の術前と根管充填後6か月を比較したCT画像で、歯の根の先と側方にあった黒い影が改善している様子が確認できる画像
▲CT画像での経過(術前、根管充填後6カ月)

根管充填後3か月

  • 患者さまに痛みはなく、仮歯も問題なく使用できているとのことでした。
  • レントゲン写真を撮影し、根尖部および側方に見られていた黒い影の状態を確認したところ、病変が拡大している様子は認められませんでした。
  • この時点では、引き続き経過を観察することとし、根管治療後半年の時点で、再度レントゲンおよびCT撮影を行う方針としました。

根管充填後6か月

  • レントゲン写真およびCT撮影を行い、経過を確認しました。
  • 治療前に認められていた、根尖部から遠心側方にかけて広がっていた黒い影は、大幅な改善が認められました。
  • これらの結果を踏まえ、今後はご紹介元のかかりつけ歯科医院にて、最終的な被せ物を作製していくこととなりました。
  • また、治療後の歯を良好な状態で保つため、かかりつけ歯科医院にて、定期的な検診やクリーニングを継続していただく予定です。
  • 必要に応じて、当院でも引き続き経過を確認し、状態が安定しているかを診ていく方針としました。

まとめ

今回の症例は、痛みや腫れといった自覚症状がまったくない状態で、検査をきっかけに歯の根の問題が見つかったケースでした。

被せ物が入っている歯や、過去に治療を受けた歯では、外から見ただけでは分からない部分で、静かに問題が進行していることがあります。

本症例では、根の先だけでなく側方にも影が認められたことから、側枝の関与や歯根破折の可能性も考慮し、慎重に診査・治療を進めました。

その結果、根管治療後の経過観察において、画像上でも改善が確認され、次の治療へと安心して進める状態となりました。

「痛くないから大丈夫」と思っていても、検査によって初めて分かる問題が見つかることがあります。気になる指摘を受けた場合や、検査で影が見つかった場合には、早めに詳しい診査を行うことが、歯を長く守ることにつながります。


※2月8日(日)は、二子玉川周辺でも雪が積もりました。
足元の悪い中、ご来院いただいた皆さま、ありがとうございました。

当院入り口前は屋根がなく、雪が多く積もりやすい場所となっております。
雨や雪の日は、足元が滑りやすくなりますので、ご来院の際は十分お気をつけください。

なお、この日は雪かきをした雪で、スタッフが小さな雪だるまを作りました。☃
 坂上デンタルオフィスの入口前に作った雪だるまの写真


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👉 【半年間も歯ぐきの腫れが治らない】20年前の差し歯の下で起きていたこと

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【半年間も歯ぐきの腫れが治らない】20年前の差し歯の下で起きていたこと

世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

歯ぐきの腫れが半年以上続いてしまい、なかなか治らない…。

そんな状態が続くと「大丈夫だろうか」と不安になりますよね。

今回ご紹介するのは、痛みはなかったものの、歯ぐきにウミの出口(瘻孔)が消えず、20年前に入れた差し歯の下でトラブルが起きていた患者さんの症例です


初診時の状態: 半年以上治らない歯ぐきの腫れ

経緯・主訴

患者さんは「痛みはないものの、歯ぐきの腫れが半年以上も続いている」とのことで来院されました。
右上小臼歯あたりの歯ぐきにウミの出口(瘻孔)ができており、近医では「8本の差し歯をすべて外さなければならない」と説明を受けたそうです。
実際には、半年前から瘻孔が続いており、同院でレーザーを当てても改善がみられませんでした。差し歯は20年ほど前に装着したもので、長期間使ってきたことも不安の一因でした。
患者さんご自身は痛みを感じてはいませんでしたが、「痛い治療が苦手」というお気持ちもあり、腫れが治らない状況に強い不安を抱えて当院を受診されました。  


所見: 瘻孔の原因を探るための診査結果

治療開始前の口腔内写真。右上小臼歯の歯ぐきに赤いウミの出口(瘻孔=フィステル)が確認できる
 ▲初診時の口腔内写真(青丸で示す部分:右上小臼歯の歯ぐきに瘻孔を認める)

右上4番の初診時のレントゲン画像。右の画像では赤丸で根尖部に黒い影のある歯を示している(図1)。右上4番の初診時CT画像。赤い線は根管の側枝を示し、黄色い丸は口蓋側に広がる黒い影を示している(図2)。
 ▲初診時のレントゲン・CT画像

●口腔内診査
自発痛はなく、打診痛や圧痛も認められませんでした。しかし右上小臼歯の頬側に瘻孔が確認されました。歯周ポケットは3mmと比較的浅く、歯周病による問題ではないことが分かります。また、右上5・4・3には連結した被せ物(クラウン)が装着されていました。

●レントゲン・CT画像所見
画像検査では、右上4番(第一小臼歯)の根尖から口蓋側に広がる黒い影(骨のない部分)が確認されました。また、差し歯の支えとなるポストの先端に空隙が疑われ、側枝への感染、あるいは歯根破折の可能性も示唆されました。

これらの所見から、瘻孔の原因となっていると考えられる治療部位は右上4番(第一小臼歯)であり、まずはこの歯の根管治療を行っていくことになりました。
連結している被せ物については、右上5-4間、4-3間を切断し、右上4のみを除去して仮歯に置き換えたうえで治療を行う方針としました。その際、隣接する歯の被せ物も一緒に脱離してしまう可能性があることを説明し、同意を得たうえで治療を進めていくことになりました。  


側枝とは?

歯の根の中には、主となる太い根管とは別に、細く枝分かれしたような通り道が存在することがあり、これを「側枝」と呼びます。非常に細く入り組んだ構造のため、通常のレントゲンでは見つけにくく、従来の治療では感染源として見落とされやすい部位でもあります。


治療の経過

治療1回目

  • 初診時と同様に痛みはなく、頬側のウミの出口は残存。歯周ポケットは3mmで特に変化なし。
  • 麻酔を行い、右上5-4-3の連結冠を切断し、右上4のみを除去する予定だったが、処置中に右上5の被せ物も一緒に脱離。右上5についても今後根管治療をしていくこととしました。
  • ラバーダム(ゴム製のシート)を装着し、清潔で安全な環境を確保してからメタルポストを除去しました。これにより、削ったカスがのどに流れたり、粘膜を傷つけたりすることを防ぎました。
  • むし歯の取り残しがないように注意深く除去し、可能な限り健康な歯質を残すように処置しました。
  • 隔壁(唾液が入り込まないようにし、歯の補強も兼ねた人工的な壁)を作製しました。
  • 右上5-4に連結した仮歯を作製し、仮着しました。

治療2回目

  • 痛みはなく、頬側の瘻孔は残存。歯周ポケットは3mmで変化なし。
  • 根管充填を行っても瘻孔が改善しない場合は、歯根端切除術(外科的処置)が必要になる可能性について説明しました。
  • 麻酔を行い、仮歯を外してラバーダムを装着しました。
  • 根管内を十分に洗浄したのち、根管充填を行いました。
  • 歯冠部を仮封し、仮歯を再度装着してこの日の処置を終了しました。

右上4番の根管充填直後のレントゲン画像2枚。根尖と側枝まで充填材が行き届いており、角度を変えて撮影することで2本の根管に薬剤が適切に入っている様子が確認できる。
 ▲根管充填直後のレントゲン画像

根の先端までしっかりと薬剤が行き届いていることが確認できます。角度を変えて撮影することで、すべての根管に充填材が適切に入っていることを確認しました。
今回の右上4の根管は、根尖部で合流する形態をしており、さらに側枝も認められました。これらが原因となり、根管の側面に黒い影(骨のない部分)が生じていたと考えられます。根管充填によってその部分まで薬剤が行き届いたことで、感染源をしっかりと封鎖できたといえます。  


治療3回目

  • 痛みはなく、頬側の瘻孔は消失。赤みのある小さな痕が残っているのみ。歯周ポケットは3mmで安定。
  • 麻酔を行い、仮歯を外してラバーダムを装着しました。
  • 根管治療を終えた右上4に対して、ポスト(支柱)とコア(土台)を作製しました。
  • 仮歯の形を修正し、再度仮着しました。
  • 今後は右上5も含めて他の歯の治療を進め、経過を確認しながら最終的に被せ物を作製していく予定です。

治療前と治療3回目の口腔内写真比較。治療前には右上小臼歯の歯ぐきに瘻孔が見られたが、治療後には改善し、赤みのある小さな痕が残るのみとなっている。
 ▲治療開始前と治療3回目の口腔内写真

治療前には歯ぐきに瘻孔が見られましたが、治療後には腫れやウミの出口は改善し、現在は赤みのある小さな痕が残る程度になっています。仮歯を装着することで、見た目や噛む機能も一時的に回復した状態になっています。


経過観察

根管充填後は、画像と症状の両面から経過を確認していきました。 中心位置が異なるため、緑の矢印で今回の症例の主訴となる歯を示しています。

右上4番の術前・根管充填直後・2カ月後・1年後までの経過を示すレントゲン画像。術前には根尖部に黒い影が見られたが、黒い影が改善している様子が確認できる。
 ▲レントゲンでの経過 (術前、根管充填直後、根管充填後2カ月、根管充填後1年)

右上4番のCT画像比較。術前には根尖から口蓋側に広がる黒い影が見られたが、根管充填から1年後には骨の再生が進み、改善傾向が確認できる
 ▲CT画像での経過(術前、根管充填後1年)


根管充填から2か月後(右上5根管充填時の状態)

  • 痛みはなく、右上4の瘻孔は消失。赤みのある痕が残っているのみで、新たな腫れは認められませんでした。
  • 歯周ポケットも3mmで安定しており、治療後の経過は順調でした。
  • さらに、右上5の根管充填時に撮影したレントゲンでも、右上4の根の黒い影が広がっている様子はなく、引き続き安定した経過を示していました。
  • 今後の対応:
    → 根管治療が必要な歯を検査・治療していく
    → すべての処置が終わった段階で改めてレントゲンやCTで経過を確認する
    → そのうえで最終的な被せ物を作製していく予定です

根管充填から1年後

  • レントゲンとCTを撮影し、右上4を含めた複数歯の経過を確認しました。
  • 治療前に見られた根尖から口蓋側へ広がる黒い影は改善傾向を示していました。
  • 根尖部では分岐や側枝が明瞭に確認され、根管充填材が根の先端までしっかりと行き届いていました。これにより、長期的にも安定した経過が得られていることが確認できました。
  • 今後の対応:
    → 治療を行った右上4を含め、他の歯も経過は良好であったため、まとめて最終的な被せ物を作製していくこととなりました。
    → 治療後の歯を長持ちさせるため、かかりつけの歯科医院で定期的な検診やクリーニングを受けていただきます。
    → さらに、必要に応じて当院でも経過を確認し、状態が安定しているかをチェックしていく予定です。

まとめ: 長く続く症状の原因は、CTで確認できることがあります

歯ぐきの腫れや痛み、違和感といった症状が長く続くと、「このままで大丈夫なのだろうか」と不安に感じる方も少なくありません。
レントゲンだけでは原因が分かりにくい場合でも、CTを用いることで歯の根の状態や骨の変化を立体的に把握でき、隠れた原因を確認できることがあります。

今回の症例でも、CTによって原因を正確に特定し、丁寧な根管治療を行うことで、症状の改善と歯の保存につなげることができました。

長く続く症状をそのままにしてしまうと、抜歯に至るリスクが高まることもあります。

気になる症状がある場合は、早めに検査・治療を受けていただくことをおすすめします。


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治療費用について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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【繰り返す歯ぐきの腫れが心配】CTで確認した黒い影の原因

世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

「歯ぐきがたびたび腫れる」「過去に神経を取った歯なのに違和感が続く」——
そんなお悩みでご来院された患者さんの症例をご紹介します。

検査の結果、根の先端(根尖部)と根が分かれている部分(分岐部)に広がる黒い影が見つかりました。レントゲンだけでは分かりづらいこうした病変も、CTを使った精密な診断により、その原因を明らかにすることができます。

一見すると「穿孔(根に穴があいている状態)」にも見えるこの影。
しかし、詳しく調べると——実はまったく別の理由が隠れていました。

過去に受けた根管治療では届かなかった感染源を丁寧に取り除き、再根管治療を行った結果、半年後には黒い影も改善。
本記事では、CTで分かった“本当の原因”と治療の流れ、そして改善までの経過をわかりやすくご紹介します。


初診時の状態: 繰り返す腫れと黒い影

経緯

約3年前に神経を取る治療(抜髄)を受けた右下6番(第一大臼歯)について、最近になって、歯ぐきが腫れてウミが出ることがあったり、噛んだときに痛みを感じることがあったりするとのことで、当院にご相談いただきました。症状は一時的に治まっても繰り返すため、「原因がはっきり分からず不安」とのお気持ちもあったようです。

主訴・所見:CT診断で分かった意外な原因とは

  • 瘻孔(ウミの出口となる小さな穴):あり(頬側歯頚部に痕が残っている状態)

右下6番の治療前の口腔内写真。不適合な銀歯が装着され、歯と歯ぐきの境目に瘻孔の痕がみられる
 ▲初診時の口腔内写真(黄色の丸で示す部分:銀歯の下のむし歯・青色の丸で示す部分:瘻孔の痕)

右下6番の初診時のレントゲン画像。すでに根管治療が行われているが、歯の根の先と根の分かれている部分に黒い影が確認される 初診時のレントゲン画像(図1:根尖と分岐部に黒い影が見られる)
右下6番の初診時のCT画像。根尖と分岐部に黒い影が確認できる 初診時のCT画像(図2:根管が湾曲し根尖で合流している様子、分岐部付近に側枝が確認できる)
 ▲初診時のレントゲン・CT画像

検査の結果、以下のような所見が確認されました。

  • 歯の周囲に広い範囲で黒い影(骨のない部分)が見られた
    → 手前の根の先・根が分かれている部分・奥側の根の先にかけて影が広がっていました。
  • 歯と歯ぐきの境目(歯頚部)に瘻孔の痕が見られた
    → 根管内部や側枝と呼ばれる細かい分岐部分の清掃が不十分だったことにより、感染が起き、ウミが出ていた痕跡と考えられます。
  • 手前の根(近心根)の根管は2本とも強く湾曲しており、根の先付近で1本に合流していた(図2・赤い線)
    → このような複雑な根管形態では、器具や薬液が届きにくく、感染が残ってしまうことがあります。
  • 根が分かれている部分の近くには、「側枝」と呼ばれる細い枝状の根管が確認された(図2・青色の丸)
  • 歯には銀歯が装着されていたが、歯との境目に段差があり、適合が不十分だった
    → 銀歯の下にむし歯(う蝕)ができていました。

側枝とは?

歯の根の中には、主となる太い根管とは別に、細く枝分かれしたような通り道が存在することがあり、これを「側枝」と呼びます。非常に細く入り組んだ構造のため、通常のレントゲンでは見つけにくく、従来の治療では感染源として見落とされやすい部位でもあります。

これらの所見から、歯の内部や根の分岐部、側枝にまで細菌が入り込み、炎症を繰り返した結果、瘻孔の形成や骨の吸収が起こったと考えられました。


治療の経過:精密な再根管治療の流れ

治療1回目

瘻孔:あり(頬側に痕がある)

  • 麻酔を行ったうえでラバーダム(ゴム製のシート)を装着
  • 銀歯と土台(コア)を丁寧に除去
  • 残っていたむし歯もきれいに除去
  • 過去の根管充填材(ガッタパーチャ)を慎重に取り除く
  • レントゲンを撮影し、充填材がほぼすべて除去されていることを確認
  • 治療後は、壁(隔壁)を作製し、レジンで仮封

根管治療中のレントゲン画像。過去の根管充填材が除去されているかを確認する目的で撮影されたもの
 ▲治療中のレントゲン画像(根の中の古い充填材が取れているか確認)

治療2回目

瘻孔:なし

  • 痛みはなく、瘻孔も消失していた
  • ラバーダムを装着し、全ての根管を丁寧に洗浄
  • 根管充填を実施
  • レントゲンで根の先端まで適切に充填されていることを確認
  • 一部に、側枝まで充填材が到達した可能性を示唆する像も認められた(根管充填直後のレントゲン画像・赤色の丸)

根管治療前と治療2回目の口腔内写真。瘻孔の痕が徐々に落ち着いてきている様子が確認できる
 ▲初診時と治療2回目開始前の口腔内写真

右下6番の根管充填直後のレントゲン画像。側枝にまで充填材が到達した可能性を示す像が確認できる
 ▲根管充填直後のレントゲン画像(根管充填は良好に行えました)

治療3回目

瘻孔:なし

  • 症状の再発はなかった
  • ポスト(支柱)とコア(土台)を作製、歯の形を整えた
  • 仮歯を作製して仮着
  • 再根管治療としての処置は完了、以後は経過観察へ移行

治療開始前・治療中・仮歯装着後の比較口腔内写真。歯肉の改善と銀歯から仮封、仮歯へと補綴が変化していく経過写真が確認できる
 ▲初診時と治療中、仮歯装着後の口腔内写真


経過観察:治療後の経過と画像で見る改善

根管充填後は、画像と症状の両面から経過を確認していきました。

右下6番の術前・根管充填直後・3か月・半年後のレントゲン画像比較
 ▲レントゲンでの経過
(術前、根管充填直後、根管充填後3カ月、根管充填後半年)

右下6番の術前・根管充填後半年後のCT画像による経過比較
 ▲CT画像での経過(術前、根管充填後半年)

根管充填から3か月後

痛み・腫れ・瘻孔などの症状はまったく見られず、食事にも問題はないとのことでした。レントゲンでも明らかな変化は見られませんでしたが、良好に経過していると判断し、次回は6か月後にCTも含めた再評価を行うこととしました。

根管充填から6か月後

症状はまったくなく、安定していました。レントゲンとCTを撮影したところ、根尖部および分岐部にあった黒い影(骨のない部分)が明らかに縮小しており、骨の回復傾向が確認できました。この結果を踏まえ、経過は良好と判断し、仮歯から最終補綴物への移行を患者さんと相談していく段階に進みました。


まとめ:歯ぐきの腫れや違和感が続く方へ

「もう神経は取っているから大丈夫」と思っていた歯でも、時間が経ってから再び腫れたり、違和感が出たりすることがあります。
特に、レントゲンだけでは見えにくい分岐部や側枝の病変が隠れている場合、CTによる精密な診断が欠かせません。

今回のように、穿孔と見間違えそうな分岐部の影が実は側枝によるものであったケースでは、正確な診断と丁寧な再根管治療によって歯を残すことができます。

以前に治療した歯で気になる症状が続いている方は、どうかそのまま放置せず、お早めにご相談ください。


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【歯の根の形って1本1本ちがう?】複雑な根管に挑む専門治療の現場

「歯の根って、みんな同じ形じゃないの?」

そう思われる方は多いかもしれません。
実は、歯の根の中を通る“神経の管(根管)”の形は、1本1本異なるのが当たり前なのです。
まっすぐな根もあれば、曲がったり、複雑に枝分かれしていたりする根もあります。
根の形が違えば、治療の進め方や難易度も変わります。

当院ではCTやマイクロスコープを活用し、1本1本異なる根の形を正確に把握したうえで、丁寧な治療を行っています。

今回は、そんな“見えない部分”である歯の根の形についてご紹介します。


歯の中の「根管」って?

歯の断面図イラスト。エナメル質・象牙質・歯髄・歯肉・歯槽骨・歯根膜の位置と名称が示され、歯髄は痛みなどの刺激を脳へ伝える役割があると説明されている

歯の中には「根管」と呼ばれる細い管があり、その中に歯髄(しずい)という神経や血管を含む組織が入っています。

歯髄があることで、歯は痛みや温度変化を感じ、酸素や栄養が届けられて健康な状態が保たれます。
歯髄は歯の中心から根の先端まで伸びていて、**その通り道が「根管」**です。

むし歯が進行して歯髄に炎症が起きると、**根管内を清掃して隙間なく封鎖する「根管治療」**が必要になります。

根管はとても細かく入り組んだ形をしていることが多いため、治療には高い技術と慎重な判断が欠かせません。

👉関連記事:【歯の神経を残せるか不安な方へ】残す治療と抜く判断のポイント


歯の根は1本1本ちがうって本当?

同じ種類の歯でも、歯の根の本数や形は人によって異なります。
たとえば奥歯(大臼歯)は通常2〜3本の根がありますが、まれに4~5本あることもあります。

また、一見1本に見える根の中でも、C字状に複雑につながっているケースや、枝分かれしているケースも珍しくありません。


どんな形があるの?〜代表的な根管の形~

Vertucci分類

根管の形の基本的な分類に「Vertucci(ベルトゥッチ)分類」というものがあります。
これは、根管がどのように枝分かれし、どのようにつながっているかを8つのパターンに分けたものです。実際の歯では、この分類に収まらないようなさらに複雑な形も多く見られるため、治療前の精密な診断がとても重要です。

▼ Vertucci分類図

根管形態の分類図。Type1~Type8までの8種類の形態が図と説明付きで示されており、分岐や合流のパターンの違いがわかる


複雑な根管形態のいろいろ

歯の根の形は、Vertucci分類のような基本パターンに加えて、さらに多くの複雑な形態があります。
中には治療が難しく、根管を見逃したり、感染が残り炎症が起きたりするリスクが高まる場合もあります。
ここでは、実際の歯科治療の現場でよく遭遇する複雑な根管形態の一例をご紹介します。

▼根管形態図

根管の複雑な形態や変異を図と説明で示した一覧表。側枝・分岐・湾曲・フィン・イスムス・癒合歯など、治療上の注意点が解説されている


根の形に合わせた根管治療で、歯をできるだけ残す

歯の根の形は、一人ひとり違い、ときにはとても複雑なこともあります。
そうした見えにくい部分までしっかり診断し、その歯に合った方法で、できるだけ歯を残せるように治療を行うことが大切です。

「抜歯しかないかも…」と感じたときも、まずはCTやマイクロスコープを活用した精密な検査を受けてみませんか。治療の可能性は、診てみないと分からないこともたくさんあります。

もし気になる歯がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


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