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タグアーカイブ: 長期経過

【大きな銀歯で再治療困難と言われた歯】CTで黒い影を確認、8年後も良好に経過

世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

今回ご紹介するのは、「大きな銀歯が入っているため再治療は難しい」と他院で言われた歯に対して、外科処置を行わず根管治療のみで改善が得られた症例です。

「再治療はできないと言われたけど、本当に歯を残すことは無理なの?」

そんな不安を抱えている方にとって、希望を感じていただける症例かもしれません。


初診時の状態:腫れとウミが出た歯、大きな銀歯の下に広がる炎症

経緯:他院では「再治療は難しい」と言われた

右上5番(第二小臼歯)の歯ぐきが腫れてきたため、近医を受診したところ「銀歯が大きく入っているため、治療は難しい」と説明され、当院を受診された。

  • 約15年前に治療を受けた歯である
  • 1週間ほど前に頬側の歯ぐきが腫れ始めた
  • 受診の2日前にウミがはじけて、痛みが引いた

主訴・所見:骨欠損の広がりと上顎洞粘膜の肥厚

  • 自発痛(何もしていない時の痛み):なし
  • 打診痛(歯を軽くたたいた時の痛み):あり
  • 圧痛(歯や歯ぐきを押したときの痛み):あり
  • 腫脹(歯ぐきの腫れ):あり(頬側)
  • 瘻孔(歯ぐきにできたウミの出口):なし

右上5番の初診時のレントゲン画像。歯の根の先に黒い影が大きく広がっており、骨がなくなっている様子が確認できる 初診時のレントゲン画像(図1:赤丸で根尖部の黒い影を、黄色の丸で大きな銀歯と土台を示している) 

右上5番の初診時のCT画像。銀歯の根の先に黒い影が広がり、上顎洞粘膜の肥厚が確認される 初診時のCT画像(図2:左下の画像では上顎洞粘膜の肥厚を青色で示し、右下の画像ではウミやガス(気泡)が疑われる状態を赤丸で示し、視覚的に表現した図)

▲初診時のレントゲン、CT画像

  • 歯の根の先に黒い影(骨のない部分)が広がっているのを確認
  • 黒い影は前後の歯の根にも及んでおり、広範囲にわたっていた
  • 上顎洞粘膜に肥厚を認めた(※)
  • CT画像では、黒い影の内部にさらに明瞭な黒い像が映っており、感染により生じたウミやガス(気泡)の存在が疑われた

※上顎洞粘膜が腫れると、頬の重だるさや痛みの原因となることがあるため注意が必要である

また、黒い影は複数の根にまたがる広範囲な病変であったため、歯根破折の可能性も視野に入れて慎重に診査した。しかし、明確な破折所見は認められなかったことから、歯の保存は可能と判断し、再根管治療を行う方針とした。


治療の経過:破折の可能性を考慮しながら慎重に進めた再治療

治療1回目

打診痛は軽度に確認されたが、自発痛や圧痛はなく、腫れも落ち着いていた。

症状は落ち着いているが、レントゲン所見から治療が必要であること、一時的に痛みが出る可能性があることを説明し、治療を開始した。

  • 麻酔後に被せ物を除去
  • ラバーダム(ゴム製のシート)を装着し、土台を除去
  • 隔壁を作製
  • 根管内の清掃を実施
  • 仮封を行って終了

治療2回目

処置当日は痛みがあったが、受診時には問題ない状態であり、軽度の圧痛が確認された。

  • 麻酔後にラバーダムを装着
  • 再度根管内の清掃を行い、根管充填を実施
  • 仮封後にレントゲンを撮影し状態を確認
  • 根の先からわずかに根充材が逸出していたが、根管充填は良好と判断
  • のう胞の可能性も否定できず、場合によっては外科処置が必要になる旨を説明し、経過を観察

右上5番の根管充填直後のレントゲン画像。根の先からわずかに根充材が逸出しているが、根管充填は良好と判断

▲根管充填直後のレントゲン

治療3回目

処置当日の痛みはあったものの、受診時には症状は消失していた。

  • 麻酔後、ラバーダム下でポスト(支柱)とコア(土台)を作製
  • 仮歯を作製して仮着

経過観察:3カ月・半年・2年と続いた骨の改善

右上5番の術前・根管充填直後・3か月・半年・約2年後のレントゲン画像比較。根の先の黒い影が徐々に縮小・改善していく様子を確認できる

▲レントゲンでの経過(術前、根管充填直後、根管充填後3カ月、半年、約2年)

右上5番の術前・根管充填後半年・約2年後のCT画像による経過比較。根尖の黒い影や上顎洞粘膜の改善が確認できる

▲CT画像での経過(術前、根管充填後半年、約2年)

根管充填から3カ月

  • 自覚症状なし、打診痛なし、軽度の圧痛あり
  • 根の先の黒い影が改善傾向にあることをレントゲンで確認

根管充填から半年

  • 自覚症状・打診痛・圧痛いずれもなし
  • 広範囲に広がっていた黒い影がレントゲンおよびCTにて縮小傾向であることを確認
  • 上顎洞粘膜の肥厚も改善していた
  • 仮歯を最終補綴に移行する方針を説明

根管充填から1年:(妊娠中)

  • 症状の再発なく、安定していた
  • 妊娠中のため画像撮影は控え、出産後に再評価する方針とした

根管充填から2年

  • 自覚症状なし
  • デンタルおよびCTにて黒い影のさらなる改善を確認
  • 非常に良好な経過であった

8年後の経過

術前と根管充填から約8年後のレントゲン画像比較。根尖の黒い影の改善が確認できる

▲レントゲンでの経過(術前、根管充填後約8年)

 他の歯が気になるとのことで来院された際、当該歯の再評価を実施。

  • 右上5番に症状はなし
  • レントゲンにて、初診時に存在していた黒い影は消失していた

 初診時には隣の歯の根まで及んでいた大きな黒い影が、ここまで改善していることからも、根管治療の効果と長期安定性が裏付けられた結果となった。


まとめ:再治療困難と言われた歯でも、根管治療で改善することがあります

  • 銀歯が大きく、再治療が難しいと診断された歯でも、CTやマイクロスコープを活用した精密な根管治療により改善が期待できる
  • 今回のように、広範囲の黒い影や副鼻腔への影響が疑われるケースでも、外科的処置を行わずに長期的に安定することもある

「この歯はもう抜くしかないのかも…」と不安に思っている方も、ぜひ一度ご相談ください。
精密検査のうえで、歯をできるだけ残すための選択肢をご提案させていただきます。


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