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【ウミが出て不安だった歯】3本の根に広がる炎症を再根管治療で改善

世田谷区・二子玉川で根管治療を専門に行っている坂上デンタルオフィスの坂上斉です。

今回ご紹介するのは、
歯ぐきからウミが出てきた——
痛みは落ち着いたものの、なんとなく違和感がある。そんな状態でご来院された左上6番(第一大臼歯)の根管治療の症例です。
CTで詳しく確認したところ、3本すべての根の先に黒い影(骨のない部分)が見つかりました。さらに、残っている歯の量が少なく、根の内側が薄くなっている部分もあり、注意深い処置が必要な状態でした。歯の構造やリスクを考慮しながら、再根管治療を行ったことで、画像・症状の両面で改善が確認できたケースとしてご紹介します。


初診時の状態:ウミが出ているが痛みはない歯

経緯

患者さんは、「2週間ほど前にウミが出てきた」とのことで来院されました。
噛んでも痛みはなく、違和感があるとのことでした。
3週間前に他院でクリーニングを受けた際は特に異常を指摘されなかったそうですが、当院での診察では以下の所見が確認されました。

主訴・所見

  • 瘻孔(ウミの出口となる小さな穴):あり(頬側)

左上6番の治療前の口腔内写真。歯ぐきに小さな瘻孔(ウミの出口)が確認される
▲初診時の口腔内写真(青丸で示す部分:瘻孔)

左上6番の初診時のレントゲン画像。すでに根管治療が行われているが、歯の根の先に黒い影が確認される
左上6番の初診時のCT画像。3本の根の先に黒い影が見られ、上顎洞粘膜にも影響が及んでいる様子が確認される 初診時のCT画像(図1:3本の根の先に黒い影が見られ、赤・黄・青の丸で示されている。炎症の広がりを視覚的に表現した図)
▲初診時のレントゲン・CT画像

  • 以前の治療で被せ物が入っている歯である
  • 3本すべての根の先に黒い影(骨のない部分)が確認された
  • 一部の根が内側に向かって曲がっており、途中に穴があいている可能性がある
  • *近心頬側第二根管(MB2)が存在している可能性がある
  • 歯の根の先にある上顎洞(副鼻腔)の粘膜にも、影響が及んでいる可能性がある

この*近心頬側第二根管(MB2)は、上あごの奥歯にまれに存在する追加の根管です。肉眼や通常のレントゲンでは見つけにくく、過去の治療で処置されずに残ってしまうことがあるため、再発の原因になることもあります。そのため、CT、マイクロスコープなどを活用し、見逃さずに適切な処置を行うことが、治療成功のカギとなります。

これらの所見から、再根管治療が必要と診断し、歯を残せる可能性を最大限考慮しながら治療を進めていくことになりました。

治療にあたっては、まず根管治療で症状の改善を目指すこと、万が一、根管治療のみでは十分な改善が得られない場合には、外科的な処置(歯根端切除術など)を検討する可能性があることをご説明しました。
また、歯の内側が一部薄くなっているため、将来的に歯根破折が生じるリスクがあること、そして歯根が破折した場合には抜歯となることもお伝えし、これらをご理解いただいたうえで治療を開始することとなりました。


治療の経過:穿孔ギリギリの根も丁寧に処置

治療1回目

痛みはなく、ウミが溜まっている感じがするとのことでした。

瘻孔:頬側にあり

  • 麻酔後、被せ物を除去
  • ラバーダム(ゴム製のシート)を装着し、レジンコア(土台)を除去
  • 隔壁作製
  • 根管内の清掃
  • 次回の治療まで仮封で終了

レジンコアは非常によく接着しており、除去の際には歯の内部を傷つけないよう、マイクロスコープで確認しながら丁寧に処置を進めました。コアと歯の境目を見極めながら、歯にヒビが入ったり、必要以上に削ったりしないよう細心の注意を払いました。

また、特に内側に曲がった根(MB根)では、過去の治療で使われていた材料を取り除いた際、歯の壁が非常に薄く、穿孔(穴があくこと)ギリギリの状態であることが分かりました。歯の外側に突き抜けてしまわないよう、歯の形状や方向を常に意識しながら慎重に処置を行いました。

治療2回目

痛みや歯ぐきのふくらみはなく、症状は落ち着いているとのことでした。

瘻孔:なし

治療前と2回目治療時の口腔内比較写真。歯ぐきにあった瘻孔が消失している様子が確認できる
▲初診時と治療2回目開始前の口腔内写真

初診時に頬側の歯ぐきに見られたウミの出口(瘻孔)は、すでに改善していました。

  • 麻酔後、ラバーダムを装着
  • MB2を含む4本の根管すべてを根の先(根尖)まで清掃
  • 根管充填を実施
  • 次回の治療まで仮封
  • 根管充填後にレントゲンで状態を確認し、処置を終了

左上6番の根管充填直後のレントゲン画像。根の先からわずかに根充材が逸出しているが、根管充填は良好と判断
▲根管充填直後のレントゲン画像(根管充填は良好に行えました)

治療3回目

痛みなどの症状はなく、経過は順調でした。

瘻孔:なし

  • 麻酔後、ラバーダムを装着
  • ポスト(支柱)とコア(土台)を作製
  • 歯の形を整え、仮歯を作製して仮着
  • 経過観察へ移行

噛み合わせや炎症の変化を慎重に確認するため、一定期間の経過観察を行うこととしました。


経過観察:違和感の変化と画像で見る改善

根管充填後は、画像と症状の両面から経過を確認していきました。

左上6番の術前・根管充填直後・3カ月・半年・1年5カ月後のレントゲン画像比較。根の先の黒い影が徐々に縮小・改善していく様子を確認できる
▲レントゲンでの経過 (術前、根管充填直後、根管充填後3カ月、根管充填後半年、根管充填後1年5カ月)

左上6番の術前・根管充填後半年・1年5カ月後のCT画像による経過比較。根尖の黒い影や上顎洞粘膜の改善が確認できる
▲CT画像での経過(術前、根管充填後半年、根管充填後1年5カ月)

根管充填から3か月後

「なんとなく違和感がある」とのことで来院されましたが、痛みや腫れなどの明らかな症状はありませんでした。レントゲン画像では、根の先の黒い影に大きな変化は見られなかったものの、症状が再発することがなかったため、経過としては順調と判断されました。

根管充填から6か月後

この時点では、自覚症状はなく、CT画像でも3本の根の先に見られていた黒い影が縮小している様子が確認されました。症状と画像の両面から改善が見られたため、最終的な被せ物(補綴)をおすすめできる状態となりました。

根管充填から1年5カ月後

「またウミが溜まっているような感じがする」とのことで再来院されました。
ただし、痛みや腫れはなく、瘻孔も確認されず、咬んだときに少し違和感があるという状態でした。
レントゲン、CT画像では根の先の黒い影はさらに改善傾向を示しており、経過は良好と判断しました。
念のため、咬合調整と研磨を行い、今後の変化に備えて引き続き経過観察としました。


まとめ

今回のように、強い痛みや腫れがなくても、歯の中や根の先には炎症が広がっているケースは少なくありません。
とくに「瘻孔(ウミの出口)」は、そのような“見えない異常”を知らせる重要なサインのひとつです。

また、一部の根が曲がっていたり、穿孔(穴)が開きそうなほど歯の壁が薄いケースでも、マイクロスコープを使って丁寧に処置することで、歯を残せる可能性を高めることができます。

ご自身では気づきにくい異常もあるため、「違和感がある」「なんとなく変だな」と感じたときは、早めに歯科で精密な検査を受けることをおすすめします。


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最後までお読みいただきありがとうございました。

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