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タグアーカイブ: ラバーダム防湿

【ラバーダムって苦しい?】ラバーダム防湿の目的

今回のコラムは、当院に隔週水曜に来てくださっている非常勤の歯科医師・奈良麻衣先生に執筆いただきました。
根管治療を中心に幅広く診療を行っており、丁寧な説明とやさしい雰囲気で患者さんから信頼を集めています。


「根の治療をしますね。その際にゴムのマスクをつけます。」―

歯科医院でそう説明されて、驚いたり不安になったことはありませんか?

「ゴムのマスクって息苦しそう」「痛そうで怖い…」と、どうしてもネガティブなイメージを持たれる方も少なくありません。
でも実は、このラバーダムというゴムのシートは、根の治療を成功させるために欠かせない道具なのです。

神経の治療(根管治療)は、歯を残すためにとても大切な処置ですが、とても繊細で時間のかかる治療でもあります。
その治療を安全に、そして確実に行うためにラバーダム防湿は大きな役割を果たしています。

今回は、その理由を5つご紹介します。


1.感染防御

根の治療は、歯の中の細い管(根管)を清掃して細菌を取り除くことが目的です。
しかし、唾液の中には 1mLあたり数十億個もの細菌 が存在しています。
治療中にこの細菌が侵入してしまうと、炎症が治らなかったり、治療後に再発するリスクが高まります。
ラバーダムは治療中に細菌が入り込むのを防ぎ、治療の成功率を高めてくれる大切なバリアです。

ラバーダム装着前(図1)と装着後(図2)の比較写真。装着により唾液の侵入を防ぎ、清潔な環境で治療が行えることが示されている
【症例写真】

図1は、ラバーダム防湿をしていない状態で下顎第1大臼歯を治療しようとしたところです。ご覧のように、唾液が簡単に窩洞(穴)の中に侵入してしまっています。このような状況では、せっかく清掃しても細菌が入り込みやすく、治療後の再発リスクが高まってしまいます。

一方、図2のように、ラバーダム防湿を行えば唾液の侵入を防ぎ、清潔な状態で確実に処置を進めることができます。


2. 器具の誤飲・誤嚥防止

根の治療では、髪の毛ほどの細さの小さな器具を使います。
ラバーダムがあることで、万が一口の中に落ちても誤って飲み込む心配がなく、安心して治療を受けていただけます。


3.術野の明示

ラバーダムを装着することで、治療部位がはっきりと見やすくなります。
余分な唾液や舌の動きに邪魔されることがないため、より正確で精密な治療を行うことができます。


4.周囲の軟組織の保護

根管治療では薬剤を使うことがありますが、もし薬剤が舌や頬の内側に触れてしまうと刺激や傷の原因になります。
ラバーダムは器具や薬剤からやわらかい組織を守り、患者さんに余計な負担をかけないようにしてくれます。


5.飛沫感染の予防

治療中には飛沫が発生しますが、ラバーダムを使用することでその拡散を防ぎます。 これは患者さんだけでなく、歯科医師やスタッフの感染予防にもつながります。


根の治療と再発について

「昔、神経の治療を受けたのにまた痛くなってきた…」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

根の中には酸素がある環境を好む細菌も、酸素がない環境を好む細菌も存在します。特に後者(例:Enterococcus faecalis)は根の中で繁殖しやすく、再発の原因になることがあります。

ラバーダム防湿を徹底することで、唾液に含まれる細菌が入り込むのを防ぎ、治療の成功率を高めることができます。


まとめ

ラバーダムは、

  • 細菌感染を防ぐ
  • 誤飲・誤嚥を防ぐ
  • 精密な治療を可能にする
  • お口の中を守る
  • 飛沫感染を予防する

といった多くのメリットがあります。

最初は「ゴムのマスクなんて不安」と思う方も、実は患者さんの歯を守るための安心・安全な道具だと知っていただけたのではないでしょうか。

当院では患者さんが快適に治療を受けられるように、ほぼすべての方に麻酔を行ったうえでラバーダム防湿を実施しています。

また、海外で行われたアンケート調査では、92%の患者さんが「次回もラバーダム防湿下で治療を受けたい」と回答しており、多くの方にその有用性が実感されています。

安心・安全な環境で、できる限り歯を残すための治療を行っております。
「以前治療した歯がまた痛い」「神経の治療に不安がある」という方は、ぜひ一度ご相談ください。


👉 初診のご予約はこちらから

当院ではCT診断やマイクロスコープを活用した精密な根管治療を、すべて自由診療にて行っています。
治療費用について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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🦷 坂上デンタルオフィス

📍東京都世田谷区玉川3-14-8 3F
📞 03-6805-6546

最後までお読みいただきありがとうございました。

根管治療専門医による精密根管治療【坂上デンタルオフィス】

日付:  カテゴリ:コラム, 副院長 奈良先生, 根管治療, 根管治療 Q&A and tagged , , , ,

神経を取る薬には、副作用がないのでしょうか? 周囲の組織に悪影響がないか心配です。

以前の感染根管治療(根の中の掃除)や抜髄(神経を取る治療)では非常に強い薬を使っていたようです。

しかし、強い薬のデメリットが報告されるようになり、比較的作用の弱い薬を使うようになってきております。

それは根管治療中に無菌的環境下(ラバーダム防湿など)で処置を行い、マイクロスコープを使用し処置をすることにより、以前より確実に感染源や神経を除去することができるようになったためです。

当院での処置では、ラバーダム防湿やマイクロスコープを用い、確かな知識・技術に基づいて処置を行ってまいりますので、余計な薬の使用を控え薬のデメリットを減らし、周囲への悪影響を抑えることができると考えております。

 

根管治療専門医による精密根管治療【坂上デンタルオフィス】

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根管治療専門医としてのラバーダム防湿 part 2

世田谷区二子玉川で根管治療専門医院として開業しております、
坂上デンタルオフィスの坂上 斉です。

前回に引き続き、
ラバーダム防湿についてご説明しようと思います。
ラバーダムはもともと、1864年にニューヨークの歯科医である
S.C.Barnumによって紹介されました。実は非常に歴史のある処置方法です。
日本では江戸時代の末期です!!

そんな昔からある処置法であるラバーダムには、
痛みを少なくするために、少しコツがあります。
スライド9
下の歯の奥歯(大臼歯)の模式図で説明いたします。
歯を前後方向で見た模式図です。
スライド2
歯は根元がくぼんでおり、
(右図の黄色いところ)
そのくぼみを狙ってクランプの爪をかけることによって、
クランプが外れない様になります。

スライド3
金属製や合成樹脂製のクランプを広げて
静かに持ってきます。

 

スライド4
根元の黄色いところに爪をかけるのですが、
この時、歯肉を挟まないように!
静かに合わせていきます。
こうすることにより、歯ぐきに触れても
痛みを少なくできます。

 

上から見たときの模式図でも説明致します。
スライド10
歯の四隅の角に爪がかかるように狙います。
スライド6

 

 

 

 

四隅に爪を合わせるように、
金属製や合成樹脂製のクランプを広げて
スライド7
静かに持ってきます。

 

 

 

この時、歯の後ろがわの角二つ
しっかりかけることが重要です。
スライド12
後ろがわの角にしっかりかけていないと、
ラバーダムシート(ゴムやシリコーンのシート)を
引っ張った時に、
クランプが外れてしまいます。

歯の大きさによって、四隅の間隔が変わってきますので、
当院では、数種類のクランプを用意して、
痛みを少なく、手早く、適切に
ラバーダム防湿ができるようにしております。
細かな話なのですが、
根管治療を行う際に、私は気にして治療しております。
治療の予後(経過)にどの程度、影響するかは分かりませんが、
細かな治療を行うようになるほど、
基本的な手技が重要になると感じております。

世田谷区の片隅で根管治療を行っている、
小さな歯科医院からの細かい話でした。
お付き合いいただき、ありがとうございます。

坂上デンタルオフィス
坂上 斉

根管治療専門医による精密根管治療【坂上デンタルオフィス】

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根管治療専門医としてのラバーダム防湿 part 1

世田谷区二子玉川で
根管治療専門医院として開業している
坂上デンタルオフィスの
坂上 斉と申します。

今回は私たち、根管治療専門医にとって
非常に大切なもの【ラバーダム防湿】についてお話ししようと思います。
一般的に言われているラバーダムとは、日本の教科書的にはラバーダム防湿と言われ、
英語では”rubber dam isolation”と言います。
日本語の「防湿」と「isolation」はニュアンスが異なる感じがしますが、
それは今回の話の本質ではないので、また後で。
IMG_4182ラバーダム防湿の目的は、
・唾液の流入による感染の防止
・根管洗浄剤の口腔内への漏出の防止
・治療用器具の口腔内落下の防止
・術野の明示
・治療用ミラーのくもり防止
(↑マイクロスコープを用いた根管治療ではこれが非常に重要!)
などがあり、
欠点として
・根管の方向がわかりにくくなる
・若干の痛みを伴うときがある
などがあります。

根管治療に際しては必ず行うことなので、
欠点を理解して行っていきます。
「行うか行わないか」ではなく、
行うときの欠点をいかに少なくするか、私はそこが大事かなと思っております。

当院ではラバーダム防湿に使用するクランプという器具も
数種類取り揃えております。
DSC_0155
クランプとは歯の根元(歯の頭の部分と根の部分の境)のくぼみに爪の部分をかけて、
引っ張ったゴムのシートが外れないように固定しておく器具です。
ラバーダムの時に生じる痛みの多くは、クランプを歯にかける時に生じますので、
いかに痛くなく、確実に、クランプをかけることが「痛みの少ない治療」には大事になってきます。
当院では数種類のクランプを駆使して、治療を行います。
なぜなら治療する歯は、歯種も違えば、残存する歯の形態も異なります。
治療する歯に適したクランプを選ぶことにより、
痛みが少なく、外れずに、唾液も入ってこない、ラバーダム防湿を行うことができます。
治療時の術野を確保し、器具を動かしやすくする、
ひいては治療の予後(経過)に関わってくる非常に重要な器具なのです。

当院で行う根管治療では必ずラバーダム防湿を行いますので、
患者さんに対して痛みを少なくラバーダム防湿が行えるように、
いつも注意しております。

『根管治療専門医としてのラバーダム防湿 part 2』では
具体的なかけ方について説明しようと思います。

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坂上 斉

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